母に会いたい、亡き母からの伝言
けれども、この季節になると、もう描けない、もうおしまい、もうアイデアなんて出てこない、といった思いに押しつぶされてしまいそうになります。
60年以上も、ひとつの片思いを追いつづけているのだもの、面白いことは、すでにもう描いてしまった……。
そんな気持ちになって、あせればあせるほど、なんにも出てこない。
──去年も同じように追いつめられて、わたしはふと母のお墓参りを思いたちました。
こんなふうに自分が落ち込んでどうしようもないときに、ふっと苦しいときの神頼み的に思い出すのです。
あの、遠い、ほとんど夢のような母に会いたい──母のお墓へ行ってみよう。
と、思いたったら矢も楯もたまらず、こっそり飛んでいきました。
2時間半たらずで来られるところなのに、わたしはもう、何年もお墓参りに来ていなかったのです。