片思いを描きつづける
思えば、わたしがこのマンガを描きはじめたのは高校生のころ。
たったひとりの風のような人の心をつかみたくて、切ない想いをマンガ日記につけたのがはじまりです。
本来なら、とても人には見せられない、秘密の片思い日記なのですが、どうしてもマンガ家になりたかったわたしは、後日これをもとに4コママンガを描いて、出版社に持ち込んだのです。
危うくボツになるところを運よく拾われ、『小さな恋のものがたり』として毎月、雑誌に連載することに。
といっても、マンガ家として食べていけるようになったのは、それから10年も後のことでしたが。
わたしの片思いは成就しなかったけれど、そこから出発したマンガのほうは延々とつづいて、今もまだ進行中です。
「いい歳をして、よくまあ、初恋だの片思いだのと描きつづけられるわねぇ」と、ときどき、人にあきれられたり、感心されたりするけれど、わたしの中で、人を想う部分はちっとも年をとらないような気がします。
人を想いはじめたころの謙虚なときめきと切なさを忘れたくなくって、そんな思いをずっと抱きつづけているのです。