あの出会いがなければ

空腹とお金の不安と孤独で、私の精神状態は限界を迎えていた。そんな入院生活で心の支えとなったのが、担当の看護師さんだった。

1日中点滴をしているので、何度も針の差し替えが必要になったが、「針が痛くて」と言うと「はーい」といつも穏やかな笑顔で対応してくれた。今思い返すと恥ずかしく申し訳ない思いで一杯だが、私は当時本当に心の余裕がなくなっていたので、とても憮然とした態度をとってしまっていたと思う。でも、そんな私に対して、その看護師さんはとにかく、いつも笑顔で、穏やかで、優しかった。

「僕もね、高校生の時、ヒオカさんと全く同じ症状で入院したことがあるんだ。ヒオカさんよりもっと数値が悪くて、体が動かなくなったんだ。でも、今こうして元気に働いているから、ヒオカさんも大丈夫だよ」

そう言ってくれたことがあった。その言葉に、どれだけ救われたかわからない。病名もつかず、今自分がどんな状況かもわからない。これからどうなっていくかもわからない。そんな中で、同じ状況を経験したことがある人が近くにいるという事実に、どれだけ励まされたかわからない。あの出会いがなければ、心が折れていたに違いない。

『死ねない理由』(著:ヒオカ/中央公論新社)
『死ねない理由』(著:ヒオカ/中央公論新社)

長年酷い腰痛持ちで、何もしないと座っているのもしんどく、痛み止めの注射を打たなければ日常生活が送れないという状況なので、定期的に整形外科にリハビリに通っている。そこでいつもお世話になっているトレーナーさんが同い年で、恋の悩みを相談されてから、よく話すようになった。

私は片頭痛持ちで、現在も頭痛外来で治療中なのだが、トレーナーさんも片頭痛持ちなのだという。たまに姿が見えないな、ということがあると、後日「頭痛で寝込んでいました」と言われるのがお決まりだ。