雷に打たれたように「歌手になる」と思った
――普通高校から大学の経営学部に進学した半崎さんは、ある出来事をきっかけに歌手を目指し、出身地である北海道から単身東京を目指す。「ショッピングモールの歌姫」のルーツに迫る。
「歌手になりたい」とはじめて思ったきっかけは、高校の学園祭でDREAMS COME TRUEの『す き』をカバーして歌って優勝した時です。それで少し手応えを感じて、大学1年の頃に知り合いに誘われてクラブで歌うようになりました。そこでいただいた拍手や「感動した」というお客様の声を聞き、雷に打たれたように「私は歌手になる」と思ったんです。
でも、当時の父は猛反対でした。私自身が好奇心旺盛な性格で、興味を持ってはすぐにやめてしまうタイプだったので、歌手という夢も「どうせ続かない」と思ったんでしょうね。親としては当然、「食べていけるの?」という心配もあったと思います。なので、毎晩父が帰ってくるたびに土下座をして、「東京に行かせてください。歌手を目指したいんです」と説得しました。でも結局、父は首を縦に振ることはなく、最終的には自分で住み込みでできる仕事を探し、都内のパン屋さんのアルバイトを見つけて東京へと旅立ちました。
ただ、母は当時、私の夢に対して唯一の応援者でいてくれました。一緒に上京して、お世話になるパン屋さんのオーナーに挨拶してくれたり。パン屋さんの2階に住み、1階と2階の往復をする毎日が私の一人暮らしのスタートでした。
私が上京した当時は、インターネットが普及する前の時代で。タウンページでレコード会社の事務所やクラブを探して、自作のデモテープやMDを持ち込んで「歌わせてください」と直談判しました。タウンページとMDって、今では考えられないですよね(笑)。週6回パン屋さんの仕事があったので、唯一のお休みの金曜日にクラブやレコード会社を回り、歌わせてもらえるお店を見つけては歌っていました。