平安装束の「かさね」と呼ばれる配色には独特の美しさがある(提供・雪月花苑)
2024年上半期(1月~6月)に『婦人公論.jp』で大きな反響を得た記事から、今あらためて読み直したい1本をお届けします。(初公開日:2024年5月5日)
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NHK大河ドラマ『光る君へ』の舞台である平安時代の京都。そのゆかりの地をめぐるガイド本、『THE TALE OF GENJI AND KYOTO  日本語と英語で知る、めぐる紫式部の京都ガイド』(SUMIKO KAJIYAMA著、プレジデント社)の著者が、本には書ききれなかったエピソードや知られざる京都の魅力、『源氏物語』にまつわるあれこれを綴ります。

前回「『光る君へ』まひろは「姫さま」と呼ばれているのに家は驚くほど簡素。「平安のF4」の声掛けに、どうする?」はこちら

十二単は誰が着るもの?

『光る君へ』を観る楽しみのひとつが、登場人物がまとう華やかな平安装束ではないでしょうか。戦国時代の大河ドラマとも、江戸時代が舞台の『大奥』とも異なる雅な色彩の衣装に興味津々、という方も多いと思います。

ネット上の感想では「十二単がすてき!」「普段はなかなか見られない十二単に目が釘付け!」といったコメントも見かけます。しかし、まひろをはじめとする主要な登場人物は、いわゆる「十二単」をほとんど着ていないのです。少なくとも、今のところは……。

「えっ、どういうこと!? あの衣装は十二単じゃないの?」と、驚かれたでしょうか。

今後のことは別として、この原稿を書いている4月末の時点ではそうなのです。

平安時代の高貴な女性が着ていた装束といえば十二単――何を隠そう、以前は私自身もそう思っていました。でも、よくよく考えると、「十二単って、いったい何?」と思いませんか。

皇族方が宮中の儀式で着用されている姿をニュースでちらりと見る程度。どういう衣装なのか、きちんと理解している人は少ないのではないでしょうか。

単(ひとえ)の着物を12枚重ねるから「十二単」?
平安時代は、皇族以外の女性も「十二単」を着ていたの?

わからないこと、疑問に思うことだらけです。