「心身ともにくつろげて、〈帰りたい〉と思える家を持つことが、食べることや着飾ることより大事だと考えています」(撮影:鍋島徳恭)
50年以上ひとり暮らしを続ける、おひとり様のベテラン・池畑慎之介さんは、自宅の居心地のよさをなにより大事にしているそうです。賃貸物件を転々としていた時期もありましたが、今は老後を見据え、工夫を凝らした一軒家を建て、自由なひとり暮らしを楽しんでいます(構成=内山靖子 撮影=鍋島徳恭)

階段もコンロも安全第一で

相模湾を望む、神奈川県横須賀市の佐島に新しい家を建て、3年前に引っ越しました。引っ越しを決めた理由はただひとつ。52歳のときから暮らしていた、新居と同じ三浦半島の秋谷(あきや)の家が、「階段だらけ」だったからです。

16歳で上京し、若い頃に1年間だけ同棲した経験はあるものの(笑)、それ以外は72歳になる今日までずっとひとり暮らしをしてきました。

誰かと一緒にいるほうがリラックスできるという方もいますけど、私の場合は、家でひとりきりの時間を過ごすことで自分自身をリセットできる。心身ともにくつろげて、「帰りたい」と思える家を持つことが、食べることや着飾ることより大事だと考えています。

秋谷の家も、自分で設計し、インテリアなど細部までこだわったお気に入りだったので、ここを終の住処にしようと考えていました。

ただ、リビングや屋上から海が見える眺望を優先したため、丘の斜面の土地を購入してしまったのです。必然的に、どこへ行くにも階段が必要な家になってしまって……。