私はHさんに頼ることにした。最初に登録したアカウントは怪しいと思ったので、「公式」と書いてあるものをLINEで検索し、これまでの経緯を伝えた。すると、「それは詐欺なので、その損失を私のところで穴埋めしましょう」と返信が届いた。

私は冷静な判断ができず、藁にもすがる思いで生活費として残していた30万を振り込み、彼の手引きで原油取引に参加。

しかし、2回取引したところでMさんと同じ流れだと気づいた。終了したいと申し出ると、やはり出金手数料を要求される。おかしい。これも詐欺かもしれない。

やっとここで、交番へ駆け込んだ。警察官は、「SNS型投資詐欺ですね。手数料を振り込んでもお金は戻りませんよ」と言う。愕然とした。3月の終わりのことだった。

警察官は、LINEグループに参加していた人はサクラ、取引口座の金額もすべて偽物だと説明する。泣きついたHさんの公式LINEも、「公式」ではなかったのだ。にわかには信じられなかった。送られてくる情報は世界情勢や株価の変動なども押さえていて、専門家が考えた文章としか思えないものだったから。

悔しくて、寂しくて、悲しい。私以外に、こんなドジはいないだろう。私はシングルマザーで娘が1人いるが、彼女ももう立派な母親。頼ることはできない。何より恥ずかしいし、誰にも知られたくない。だから、墓場まで持っていこうと決めた。

ネットに疎い高齢者だったら、こんな目には遭わなかった。世の中はなんて残酷なんだ! 自分が甘い、疑わない人間だからか。あまりにもひどい末路だ。

ニュースを見ていると、私より高額の詐欺被害に遭った人がたくさんいるようだが、貯金0円になってしまった人はほとんどいないだろう。

今は毎日、卵、納豆、安い魚や肉で暮らす日々。せめてもの救いは、体が丈夫であること。神様はこれを予知して、私に健康を与えてくださったのだろうか――。きっとそうに違いない。

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