撮影:霜越春樹
97歳の今も多くの連載を抱え、毎月法話の会を催すなど精力的に活動を続けている瀬戸内寂聴さん。続いた台風の被災地へ思いを寄せます(撮影:霜越春樹)

たいしたことはしてさしあげられないけれど

2019年、9月に台風15号、10月には台風19号と、立て続けに大型の台風が日本を襲い、広い範囲で大きな被害が出ました。被災された方々へ心からお見舞い申し上げます。

ここ数年、すさまじい豪雨による水害が多くなってきたようですね。昔は、台風が多い時季は立春から数えて二百十日と言われ、だいたい子どもたちが新学期を迎える9月1日頃でした。以前とは気候が変わってきているようです。地球も私のように年を取ってきたのかもしれません。

これまで私は、東日本大震災などのような大きな災害があれば、義援金や支援物資を携えて被災地へ飛んで行きました。たいしたことはしてさしあげられないけれど、「大変ですね」と声をかけながら、疲労で体が凝り固まった方々に按摩をし、どんなにつらい体験をされたか、耳を傾けたりしました。

次第に被災者の方たちの緊張がほぐれていく様子を見ると、私も少しは役に立っているのかなと思ったものです。けれど今は97歳にもなり、体が弱り、駆けつけることもできない。歯がゆいかぎりです。

いまだ避難生活が続いている方は、さぞ不安なことでしょう。ご家族や身近な方が被害に遭われた皆さんも、どんなにか胸を痛めておられることか。