父に認知症の疑いをかけられた

数日後、父の横に座ると口臭が気になって聞いた。

「ねぇ、また入れ歯を洗うのを忘れたんじゃない? 口、少し臭いがするよ」

「いや、昨日ちゃんと入れ歯を取り換えて寝たはずだ」

口調から、父がムキになっているのがわかる。私は諭すように言った。

「口の中を不潔にしていると、それが原因で病気になることもあるから、ちゃんとしてよ」

父は心底ムッとしたようで、語気が強くなった。

「毎日同じことばかり言うな! おまえ、認知症になったんじゃないか?」

ドキッとした。確かに最近私はスーパーに行っても、何を買うために来たのか思い出せなかったり、仕事の打ち合わせのスケジュールを手帳に1日間違えて書き、人に迷惑をかけたりした。思い当たることが多々あって、父に言い返せなかった。父は敏感に人の隙を感じ取って私に言う。

「ここのホームは居心地がいいぞ、ご飯も作らなくてすむから楽できる。おまえもそろそろここに入りなさい。いつでも俺に会えて一石二鳥だ」

「あのね、パパ。ここは要介護1以上でなければ入居できないの。私はまだ対象になっていないのよ」

真実を言ったのに、父はなぜか楽しそうだ。

「それならおまえも早く介護認定を受けなさい!」

「老々介護」が現実味を帯びてきた。

(つづく)

【漫画版オーマイ・ダッド!父がだんだん壊れていく】第一話はこちら

【関連記事】
「免許返上は嫌だ!」と駄々をこねていた認知症の94歳の父が、すっかり大人しくなりバトルが減った。その代わり好き嫌いが増えてきて…【編集部セレクション】
【父は仕事人間】日曜参観に来ない父、母はいつも家にいてくれると思っていた…老々介護の父と娘、50年前のお話 【第1話まんが】
父と娘の老々介護。95歳、認知症の父が病院を退院し、家に戻らず老人ホームに入る覚悟を決めた。引っ越しの手伝いに、息子が来てくれた

【コミック版】オーマイ・ダッド!父がだんだん壊れていく』(著:森久美子 , 作画:とんがりめがね/中央公論新社 )

(WEBメディア『婦人公論.jp』で好評を博した連載を電子オリジナルコミック化!

95歳・男やもめの頑固な父を67歳の一人娘が介護する――
笑えて泣けて、ちょっと切ない…
肩の力が抜ける、失敗だらけだけれど温かい、父と娘の老々介護の話

もしや認知症? プライドが高い父
とうとう父は事故を起こした
父、熱中症で動けなくなる
恐れていた郵便
親たちを介護し、49歳で母は逝った
歩ける父は入院を拒否された

老いは必ずやってくる。
親への失望、ジレンマ、迷い、自責の念――
選択の連続、終わりもわからず、つらく切ない日々でも、日常の小さな喜びを繋ぎ合わせて悔いのないゴールを迎えるための処方箋

【コミック版】オーマイ・ダッド!父がだんだん壊れていく
【コミック版】オーマイ・ダッド!父がだんだん壊れていく
作者:森久美子、とんがりめがね
出版社:中央公論新社
発売日:2026/2/27
amazon