父に認知症の疑いをかけられた
数日後、父の横に座ると口臭が気になって聞いた。
「ねぇ、また入れ歯を洗うのを忘れたんじゃない? 口、少し臭いがするよ」
「いや、昨日ちゃんと入れ歯を取り換えて寝たはずだ」
口調から、父がムキになっているのがわかる。私は諭すように言った。
「口の中を不潔にしていると、それが原因で病気になることもあるから、ちゃんとしてよ」
父は心底ムッとしたようで、語気が強くなった。
「毎日同じことばかり言うな! おまえ、認知症になったんじゃないか?」
ドキッとした。確かに最近私はスーパーに行っても、何を買うために来たのか思い出せなかったり、仕事の打ち合わせのスケジュールを手帳に1日間違えて書き、人に迷惑をかけたりした。思い当たることが多々あって、父に言い返せなかった。父は敏感に人の隙を感じ取って私に言う。
「ここのホームは居心地がいいぞ、ご飯も作らなくてすむから楽できる。おまえもそろそろここに入りなさい。いつでも俺に会えて一石二鳥だ」
「あのね、パパ。ここは要介護1以上でなければ入居できないの。私はまだ対象になっていないのよ」
真実を言ったのに、父はなぜか楽しそうだ。
「それならおまえも早く介護認定を受けなさい!」
「老々介護」が現実味を帯びてきた。
(つづく)
【漫画版オーマイ・ダッド!父がだんだん壊れていく】第一話はこちら