父に認知症の疑いをかけられた
数日後、父の横に座ると口臭が気になって聞いた。
「ねぇ、また入れ歯を洗うのを忘れたんじゃない? 口、少し臭いがするよ」
「いや、昨日ちゃんと入れ歯を取り換えて寝たはずだ」
口調から、父がムキになっているのがわかる。私は諭すように言った。
「口の中を不潔にしていると、それが原因で病気になることもあるから、ちゃんとしてよ」
父は心底ムッとしたようで、語気が強くなった。
「毎日同じことばかり言うな! おまえ、認知症になったんじゃないか?」
ドキッとした。確かに最近私はスーパーに行っても、何を買うために来たのか思い出せなかったり、仕事の打ち合わせのスケジュールを手帳に1日間違えて書き、人に迷惑をかけたりした。思い当たることが多々あって、父に言い返せなかった。父は敏感に人の隙を感じ取って私に言う。
「ここのホームは居心地がいいぞ、ご飯も作らなくてすむから楽できる。おまえもそろそろここに入りなさい。いつでも俺に会えて一石二鳥だ」
「あのね、パパ。ここは要介護1以上でなければ入居できないの。私はまだ対象になっていないのよ」
真実を言ったのに、父はなぜか楽しそうだ。
「それならおまえも早く介護認定を受けなさい!」
「老々介護」が現実味を帯びてきた。
(つづく)
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95歳・男やもめの頑固な父を67歳の一人娘が介護する――
笑えて泣けて、ちょっと切ない…
肩の力が抜ける、失敗だらけだけれど温かい、父と娘の老々介護の話
もしや認知症? プライドが高い父
とうとう父は事故を起こした
父、熱中症で動けなくなる
恐れていた郵便
親たちを介護し、49歳で母は逝った
歩ける父は入院を拒否された
老いは必ずやってくる。
親への失望、ジレンマ、迷い、自責の念――
選択の連続、終わりもわからず、つらく切ない日々でも、日常の小さな喜びを繋ぎ合わせて悔いのないゴールを迎えるための処方箋






