物理主義と二元論

科学や哲学など世俗の学問の世界では、死はどのようなものだと考えられているのだろうか。

科学の基本的モデルは物理学などに代表される自然科学だ。一般的に言って自然科学者は、実在を物質的なものだと捉えている。

すなわち、宇宙は時空間を占める物理的実在でできている。精神現象心や意識や記憶や思考や感情は、物理的身体の機能である。

つまり、精神現象は物理的身体から独立した実在ではないので、死んで身体が崩壊すれば、そのときに精神現象は消失する。

燃えるものが無くなったら火は消える。それと同じだ。

死についての哲学的講義録で有名なシェリー・ケーガンは、こうした《物理主義》的な見方を確定された事実と考えてはいないものの、しかし、今のところこれが最も一貫性のある、 最も確からしい見方だとしている。

絶対ではないが最も説得力がある、というのである(『「死」とは何か』)。たいていの自然科学者も、多くの哲学者も、たぶんこれに同意すると思われる。