「悲しきピエロ」の結末

19世紀半ばのフランスで発表されたジェロームの『仮面舞踏会後の決闘』は、そのイメージが広く共有された上での作品だ。

ジャン=レオン・ジェローム『仮面舞踏会後の決闘』1857年 エルミタージュ美術館蔵<『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』より>

タイトルどおり、仮面舞踏会で揉め事が起こり、血気盛んな若者同士のこととて着替えもせずに仮装したまま冬の公園に馬車を走らせ、決闘に至った、その悲劇的結末が描かれている。

勝者は後ろ姿を見せて、右手に去ろうとしている。

『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』(著:中野京子/中央公論新社)

ピエロ姿の青年は無念そうな形相で、まだ剣を握ってはいるが、友人たちの慌てふためく様子から命の火が消えかかっているとわかる。

決闘の原因は、恋の鞘当(さやあ)てだったのだろうか、書いたばかりの詩をけなされたためだろうか……鑑賞者は「悲しきピエロ」に深い同情を寄せずにおれない。