睡眠が変われば腸内も変わる

搭乗前日と比較して搭乗1日後には、肥満に関係するといわれているファーミキューテス門の細菌が増加していましたが、搭乗2週間後には、搭乗前日のレベルにまで減少していました。

一時的な睡眠障害によって変化した腸内マイクロバイオータの組成は、2週間ほど経てば元に戻ると推測できます。

次に、搭乗前日、搭乗1日後、搭乗2週間後のヒトの糞便を無菌マウスに移植する実験が行われました。

その結果、搭乗1日後の糞便を移植されたマウスでのみ、他の糞便を移植されたマウスと比較して体重が増加したのです(1-5)。

これらのことから、ヒトにおいても睡眠障害は腸内マイクロバイオータの組成を変化させるだけでなく、肥満や糖尿病といった疾患、つまりメタボリックシンドロームを引き起こす原因となる可能性があることがわかったのです。

・参考文献
1-1 Thaiss CA et al., Cell 159, 514-529, 2014.
1-2 Leone V et al., Cell Host & Microbe 17, 681-689, 2015.
1-3 Zarrinpar A et al., Cell Metabolism 20, 1006-1017, 2014.
1-4 Liang X et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 112, 10479-10484, 2015.
1-5 Thaiss CA et al., Cell 159, 514-529, 2014.
1-6 Goodrich JK et al., Cell 159, 789-799, 2014.

※本稿は、『「腸と脳」の科学 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき』(講談社)の一部を再編集したものです。

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「腸と脳」の科学 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき』(著:坪井貴司/講談社)

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