美空ひばりの魅力
リズミカルな歌謡に挑戦したものには、昭和27年8月の「お祭りマンボ」(作詞作曲:原六朗)がある。
ひばりの魅力は、日本調からジャズまで幅広く歌いこなすことができるところだろう。
「演歌歌手」がジャズやポップスを歌唱すると、「こぶし」が楽曲の雰囲気を台無しにしてしまう。
ひばりは「演歌」のように「こぶし」を入れる癖はないが、戦前の音楽学校で学んだ歌手たちとも違った。
クラシックの歌手を目指していたか(クラシック唱法を学んでいたか)否かの差が影響しているように考えられる。
戦前に人気のあった東海林太郎が終戦後にヒットに恵まれなくなり、ひばりがバトンを受け取るようにスターの階段を急上昇していく姿が、そのことをよくあらわしている。
※本稿は、『昭和歌謡史-古賀政男、東海林太郎から、美空ひばり、中森明菜まで』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『昭和歌謡史-古賀政男、東海林太郎から、美空ひばり、中森明菜まで』(著:刑部芳則/中央公論新社)
日本人の心を踊らせ、泣かせてきた昭和の歌謡曲。
本書は音楽家が残した一次史料を歴史学の手法を用いて検証。各曲が生まれた背景とその特徴を炙り出す。
藤山一郎、笠置シヅ子、山口百恵……。人はなぜ昭和歌謡に魅了されるのか。