『My little princess』

しかしEVAはその1年前の2011年に自分の体験を『My little princess (日本語タイトル/ヴィオレッタ)』として映画化。カンヌの映画祭の批評家週間50周年記念映画として華々しく公開し、女優から監督へと転身を遂げている。

映画のPRのための話題作りにしては、告訴は遅い気がする。EVAはこの映画を作りながら過去の記憶に苛まれ、「落とし前をつけなくては」と、実の母を訴えたのだろうか?

そのくらい、この映画は、危険な香りに満ちている。まさかこれが実話だなんて。自分の母親によって、自分の「性的な魅力」を撮影され、それを世界中に公開されてしまう。つまり、母親によって「バーチャル売春」をさせられていたわけだ。信じがたいが、それが事実だったことは、今もネットに残る彼女自身の写真が証している。

その実体験を、これまた実在の幼い女の子の肉体の撮影で再現するという試みは、普通に考えれば無謀だ。それも児童虐待にはならないのだろうか? 映画自体は公開時に世界中で物議を醸したが、主役を選ぶオーディションには、裸体を晒すことを承知で約500人が応募。ついにEVAの出身地ルーマニアから、「イメージぴったりの」美少女が発掘される。

その名はアナマリア・ヴァルトロメイ。父親の勧めでオーディションに応募したというから、この父親もかなり先進的だ。特典映像のアナマリアのインタビューを見ると、撮影後の成長した姿ではあるが、10代前半とは思えない落ち着きだ。話し方には稀なる知性を感じさせ、なるほど「普通の子どもと違う」。しかも美貌に恵まれているのだから、女優になるべくして生まれついたのだろう。