実在の親子が体験した背徳
映画の成功はこの「フレンチ・ロリータの新星」アナマリア・ヴァルトロメイの発見と母親を演じたイザベル・ユペールのキャスティングで、ほとんど決まったといっていい。無名の新人は、裸体を晒しての新しいロリータ像を作り出し、イザベル・ユペールは初老の自分がすでに失った「少女」の怪しい魅力をわが娘に見出し、憑かれたように撮影する、「モンスター・マザー」像を卓抜な演技で作り上げた。
そして私たちは、かつて実在の親子が体験した背徳の撮影現場に潜り込む。「映画」というものの特権がまさにここにある。私たちは観客として、本当はしてはいけないこと、児童ポルノか芸術か犯罪ぎりぎりの行為に加担し、時にカメラマンになり、時に幼い美少女モデルの視点から、その現場を追体験できるのだ。それは何という快楽だろう!!
映画では、主人公のEVAの名前が「ヴィオレッタ」に変えられ、そのまま日本公開時のタイトルになっている。デュマの小説やヴェルディのオペラで知られる『椿姫』の主人公、娼婦のヴィオレッタを彷彿させるからだろう。母親のイリナは「アンナ」という名前になる。
この母親アンナ役のイザベル・ユペールが演じた母親の狂気には舌を巻くしかない。「実の母親がまさかここまでしないでしょう」という行為や発言でも、イザベルが演じると納得してしまう。その迫力にただ圧倒され、口を開けている間に物語が進んでいくのだ。