ドリアン 2人とも、2丁目に通い始めたのはいつ頃? わたしはインターネットで2丁目のことを知って、高校を卒業するくらいのタイミングで、このめくるめく世界にやってきたんだけど。
エスム わたしの頃はまだネットがなくて、週刊誌の「2丁目特集」を見て、「まずは、ここに行くしかない!」って意を決して。最初に行ったお店で、「18歳で80人とつきあった経験がある」なんて話を聞いておじけづいたんだけど、その後、もう少し硬派なグループの中でゲイの友達ができて、すっかり気分が高揚しちゃった。
ホイみ わたしが2丁目デビューしたのは、22歳と遅めだったんですけど、恋愛相手がほしいというのはもちろんのこと、やっぱり仲間がほしかったんですね。
ドリアン そうそう、ゲイって、社会の中ではやっぱりマイノリティなので、孤独や不安を常に感じているから。そんなわたしたちにとって、2丁目は合コン会場であり、サークル活動の場であり、安心できるお茶の間でもあるのよね。
ホイみ でも、わたしが2丁目に初めて足を踏み入れたとき、自分より若くてカワイイ男の子がモテまくっていて。自分は恋愛対象としてまったく価値がないっていうことに気づかされ、頭をハンマーで殴られたみたいに打ちのめされて。
それで、どうしたらもっと自分に自信が持てるんだろうと考えていたときに女装と出会った。恋愛市場では評価されなかった自分でも、ドラァグクイーンの姿でステージに上がればみんなが注目してくれたので、今では女装したまま成仏できたらいいなって思うくらい。
エスム ホイみの場合、女装は自分の承認欲求を満たしてくれる手段なのよね。女性の場合も同じだと思うけど、誰かから愛されたり、「モテること」って、自分の承認欲求を満たす強力な手段でしょう。でも、年齢を重ねるごとに、恋愛市場における自分の価値が下がってしまうから、精神的にどんどん危うくなっていく。
ドリアン 特にゲイの場合、社会的に成功していようが年収が高かろうが、モテない人はモテないし。
エスム しかも、男女の恋愛の場合なら、結婚して子どもを作って家族になることで、恋愛市場とは違った次元で居場所を見つけることができるけど、ゲイの場合は一生恋愛市場から降りられないから。
ホイみ だから、トシをとって、自分の価値がどんどん下がっていくことの恐怖は、ちょっと可愛くてモテちゃった子のほうが、実は深刻なのよ。(笑)