「「これでいいのかな?」と、つい最近まで思っていました」(細川さん)写真撮影:霜越春樹

出産して退院すると、そのまま自宅に戻り、親子3人の生活が始まりました。私、母乳があまり出なかったので、すぐにミルクに切り替えたんです。それでツレは「俺の出番だ」みたいな感じになり(笑)、それからずっと育児は彼がやっています。

実は、「これでいいのかな?」と、つい最近まで思っていました。ツレは仕事が大好きで、「男は仕事をするものだ」というタイプだったから。勤めていた会社はその後、倒産してなくなりましたが、いずれはしたいことが見つかって、また仕事を始めるんじゃないかと。

『ツレうつ。』が映画化された後、私の仕事がない時期もあったんです。財政的にもちょっとしんどくて、「なんで働いて助けてくれないのかな」と思ったりもしました。その気持ちを伝えると、やっぱりケンカになったりして。「お金を稼ぐだけが仕事じゃない。どうしてそれをわかってくれないんだ」と言ってましたね。

彼が勤め人に戻らないという選択をしたことで、私の焦りは大きくなるばかりでした。私が「仕事ください、仕事ください」とあちこちの出版社に頼んでも、逆に減る一方。でもある時、「焦ってるからダメなのかも」と気づいたんです。それで「流れに乗ってみよう」と発想を変えました。声をかけてもらった仕事は、とにかく何でもやってみようと。

そうしたら体にいい食事やセクシュアリティ、宝塚歌劇団など本当にいろいろなテーマのお仕事をいただくようになり、どんどん世界が広がっていったんです。あの時の直感は正しかった。行き詰まった時は、流れに乗って身を任せるのが一番なのだな、というのが今の実感です。

 

人の役に立つことが生きがいに

うつ病に完治はないといわれています。つまり寛解状態がずっと続くということ。再発率も高いそうです。だから今も疲れをためないよう、気をつけていますね。この1年でガラッと変わった出来事というと、ツレが運動を始めたことです。

きっかけは自転車でした。彼が乗りたいという自転車があって、店で「これに乗りたいんです」と言ったら、「あなたでは無理です。体重が重過ぎます」と言われたんですよ。「今、80キロなんですけど、どれぐらい減らしたらいいですか」と訊くと、「ほんとは70キロぐらいがいいんですけど、まあ、せめて5キロは減らしてください」と。