南海泡沫事件
株式売却から2カ月後、ニュートンは慎重さをかなぐり捨てた。6月14日、財産のほとんどを南海会社の株式に再び投じることを決意する。
9月に南海会社で詐欺スキャンダルが勃発し、株価はあっという間に90%下落した。国会議員を含む同社幹部の多くはロンドン塔に収監され、財産を没収された。
「南海泡沫事件」と呼ばれるこのスキャンダルの余波は大きく、イギリスの金融市場は大打撃を受け、数十年にわたって企業形成の足をひっぱった(1)。
一説では南海会社の破綻によってニュートンが被った損失は2万ポンド、今日の価値にして2000万ドルとされる(2)。
「天体の動きは予測できても群衆の狂気は予測できない」と偉大な物理学者は嘆いたという。
この大失敗にニュートンは深く傷つき、生涯人々が自分の前で南海会社の名を口にするのを許さなかったとされる。
どれほど合理的で聡明な人であっても、後から振り返れば明らかに投機とわかるものに巻き込まれてしまうことを物語るエピソードだ。
南海会社をめぐる投機熱は当時としては最悪の部類に入るが、その100年ほど前にもヨーロッパでは別のバブルが起きていた。チューリップ危機だ。