金融庁が公表した「NISA口座の利用状況調査」によると、2024年6月末時点のNISA口座数は2427万6789口座で、2024年3月末から約105万口座増加しました。そのようななか、記者や金融ジャーナリストとして活動する、カナダ出身のニコラ・ベルベさんは「投資にリスクはつきもの。だが、投資しないのはもっとリスクだ」と語っています。そこで今回は、ニコラさんのベストセラー『年1時間で億になる投資の正解』から、一部を抜粋してご紹介します。
ニュートンの大損失
アイザック・ニュートン卿は一生に一度あるかないかの大チャンスを見送るような人間ではなかった。
1720年の初夏、ロンドン市街の気温が20度を超えたころ、万有引力の法則を生み出した人類史上最高の科学者の一人であるニュートンは、財産の大部分を南海会社の株式に突っ込もうとしていた。
その9年前にロンドンの知識階層が立ち上げた南海会社は、アメリカ大陸のスペイン植民地から奴隷や黄金を輸送する貿易ルートの独占権をイギリス政府に認められていた。
当時のイギリス国王ジョージ一世が役員の一人に名を連ねたことも投資家の信頼を高めた。ほとんど利益は出ていなかったが、それでも国際貿易の拡大とともに確実に成長するであろう会社に投資したいと考える国民は多かった。ロンドンの街はこの胸躍る投資案件の話題でもちきりだった。
ニュートンが最初に南海会社の株式を買ったのは1720年2月のことだ。それからわずか2カ月で持ち株の価値は2倍になった。会社が投機熱に巻き込まれたと見たニュートンは早々に利益を確定しようと考え、同年4月19日に株を売却している。
だが株価はその後も下落するどころか上昇しつづけた。友人知人の財産は日々増えていくのに、ニュートンはもはやその恩恵に与(あずか)れなかった。