厚生労働省が公表した「令和4年 国民健康・栄養調査」によると、1日の平均睡眠時間は、6時間以上7時間未満の割合が最も高いそう。そのようななか、上級睡眠健康指導士・角谷リョウさんは「睡眠不調を招くのは、日本人であるがゆえだったり、日本が睡眠にあまりにも適さない環境にさらされていることだったりが大きな原因」と語っています。そこで今回は、角谷さんの著書『超熟睡トレーニング: 15万人の“日本人”のデータを集め、睡眠改善をしてきた「上級睡眠健康指導士」だけが知っている』から一部引用、再編集してお届けします。
「睡眠は深ければいい」「睡眠時間は長ければいい」は×
睡眠中、脳がずっと同じレベルで休んだ状態になっているわけではありません。眠っている間にも脳の活動はさまざまに変化しています。
「ノンレム睡眠」とか「レム睡眠」という言葉を聞いたことはありますか? 人の睡眠はこの2つの睡眠状態で構成されます。
さらにノンレム睡眠には2種類あって、脳の活動の停止レベルによって「深いノンレム」と「浅いノンレム」に分けられ、レム睡眠と合わせて3つの睡眠状態があるということになります。
レム睡眠は眠っているときに眼球が素早く動くこと(英語でRapid Eye Movement)から、この名が付けられました。脳波を見るとレム睡眠のとき、脳の中でも記憶や学習に関わる偏桃体や、大脳辺縁系が活動しています。そして情報の整理や統合、記憶の定着がなされていると考えられています。
ちなみにレム睡眠では、脳の活動が活発ですが体は完全に弛緩(しかん)している(緩んでいる)ため、レム睡眠中に急に目覚めると体が動かない「金縛り」状態になってしまいます。
レム睡眠中でも脳と体がつながっていると、夢の動きが体に出てしまってベッドから落ちたり、周りで寝ている人に危害が加わったりして非常に危険です(これは睡眠の病気の1つで、レム睡眠行動障害と呼ばれています)。