ロイシンの含量を高めると筋力が増加する
厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、タンパク質摂取量の平均値は、男性で78.8グラム/日、女性では66.4グラム/日となっており、現代の日本人はとくにタンパク不足にはなっていないようです。
でも、標準偏差といわれるデータのばらつきが非常に大きいことから、しっかりとる人と、とらない人の差も大きいことがわかっています。
「年をとったらお肉を食べましょう」というのは、このようなデータに基づいているものと思います。ただし、腎臓病の人は、主治医との相談が必要です。
タンパク質を構成するアミノ酸のなかでも、「ロイシン」といわれるアミノ酸は最も大切です。
ややこしい名前ですが、β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)という物質は、ロイシンの約5パーセントが体内において変換される代謝産物であり、筋肉におけるタンパク質合成を誘導する重要な働きをすると想定されています。
必須アミノ酸のうち、ロイシンの含量を40パーセントまで高めた介入試験の結果でも筋力の増加が認められており、ロイシンの補給の有用性が示されました。
前に述べたように、高齢者はアミノ酸が筋肉組織に届いても筋肉タンパクがつくられにくいのです。
そこで、ロイシンを多く含む食品(たとえば、乳製品、卵、魚、大豆など)をとって効率のよいかたちでアミノ酸を補充すると、より有効にサルコペニアを改善する可能性があることが指摘されています。