2024年2月新橋演舞場『ヤマトタケル』、老大臣役(写真提供◎松竹)

記憶力を鍛えるためSNSにも挑戦

澤屋に入って、まもなく70年になります。九代目の市川中車さんのご活躍はもとより、團子さんも昨年5月の明治座公演で、急な代役ながら主人公を立派に演じ切って、頼もしい限りです。

澤屋のスーパー歌舞伎は、宙乗りの趣向でご存じの方も多いかもしれません。僕も舞台上で演者を補佐する「後見」として、若旦那に宙乗りの器具を取りつけたりしたものでした。その宙乗りに、なんと僕は92歳で初挑戦(笑)。

一昨年8月の納涼歌舞伎『弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)』で、商店主だが実は鳩の精、というオリジナルの役をいただき、ゴンドラ上で芝居をしたのです。「さらばじゃ~!」と見得をするのですが、もちろんこの宙乗りの見得も役者人生で初めて。この年でも初体験をさせていただき嬉しい限りです。

今後やってみたい役もたくさんあるんですよ。たとえば『双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)』「引窓(ひきまど)」のお幸。義理の息子と実の息子との板挟みに苦しむ老女の役です。

あとは身内の勉強会でやらせてもらった『平家女護島(へいけにょごのしま)』の俊寛(しゅんかん)や、80年に演じた『源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)』の義賢(よしかた)の再演もいいですねえ。

僕は、星になるまでずっと役者を続けたい。劇場で倒れると迷惑だからできれば自宅で(笑)。芝居を終えて家に帰り、風呂に入って食事をして、眠ったまま亡くなるのが理想です。体力を維持するためにも、ちゃんと食べてしっかり歩かないといけませんね。記憶力はいいほうですが、鍛えなきゃ衰えると思ってSNSにも挑戦しています。

Xは数年前に始めました。舞台の宣伝や日常のことに加え、女歌舞伎や海外公演などの思い出も綴っています。もうほかに覚えている人が少ないことを書き残すのも、「最高齢」の役目かと思って。ずっと敬遠してきたスマホも、若い人に習って使い始めました。

投稿にはさまざまな感想や、「応援しています」などのメッセージが届き、嬉しく思っています。これからも皆さんの応援に感謝しつつ、さまざまなことに挑戦していけたらと願っています。