さらに、厳しさも相当なものでしたね。子どもに対する期待が大きく、すべてに完璧を求める。ピアノのお稽古をしている時はずっと横に張りついているし、宿題中も隣に座って離れません。
ちゃんとやったかどうかチェックし、試験の点数が悪かったら、「昨日教科書読んだところじゃない。なんで間違えるの!?」と怒られ、すぐ復習するようにと命令する。眠くなってこっくりこっくりすると、手が飛んでくることもありました。
母はものすごい記憶力の持ち主で、1回教科書を読むと全部覚えてしまいます。だから、私にできないのが理解できなかったのでしょう。
母は、私が小学生の時、一緒に勉強するのが楽しくて仕方ないと言っていました。5歳から9歳まで戦時下で過ごし、勉強どころではなかったし、戦後はそれまで使っていた教科書を間違っていたと黒塗りさせられた以外、きちんとした授業はほぼなかったそうで――。小学校時代ほとんど勉強ができなかったことが残念だったとよく言っていました。
そんな話を子どもだった私が聞いても理解できず、ただ母から怒られるのが怖いだけでしたけれど……。