より身軽に、より自由に

秋吉 好き嫌いが激しいとか、わがままとは違うと思います。ある程度は拒絶しなければ、収拾がつかなくなりますからね。我が道を突き進めないですし、自分に課せられたミッションを果たすこともできなくなってしまう。

『母を葬る』(著:秋吉久美子、下重暁子/新潮社)

下重 それが不思議なことに、自然と変わってきたの。仕事もきっちりこなしてきたし、いまでも厳しい人間であることに変わりはないんだけど、80歳に近づいた頃から、それまで心身を覆っていた「鎧」が外れてきたように感じるんです。

秋吉 より身軽に、より自由になってきた。

下重 それでとってもラクになったの。「母に似てきた」といわれることも、嫌ではなくなった。

秋吉 むしろ、ちょっぴり嬉しい?

下重 嬉しいというのは憚られるけど、母のいいところを認められるようになったのは本当です。

母の自慢みたいな話はしたくないけれど、頭がよくて度胸のある女性でした。愚痴をこぼすこともなかったしね。もしも社会に出ていたら立派な働きをしていたと思います。買い物していても、決断が早くてね。必要なものをパッと選んで、しかも趣味がいい。母は自分の価値観をしっかりもっていたのですね。

秋吉 娘というのは、そういう部分を意外にしっかりみているものですよね。