写真◎新潮社

大人になってからも母に反発していた

下重 隠れファンも多かったんですよ。

「娘は無愛想だけど、お母さんがかわいいから」

そういって、私が不在でもお構いなしに訪ねてくる友人やマスコミ関係の人たちがいたくらい。誰とでもすぐ打ち解けましたし、サービス精神旺盛で、お客さんがあると心からもてなしているのがよくわかりました。

秋吉 お会いしてみたかったな。

下重 だからこそ、大人になってからも反発していたと思うんです。それだけ魅力もあって、自分一人の力でじゅうぶん生きていける資質を秘めているのに、どうして宿木みたいに父にくっついて暮らしているの? って。

秋吉 お父さまへの愛があったんですよ、「マーちゃん」と呼ばれていたくらいですから。お父さまにとっては、取りつくろわない自分をみせられる唯一の女性だったし、お母さまもその愛に応えた。

下重 そうだとしても、「雅子」として生きてほしかったなあ……。母や妻ではなく、一人の個人として。心が落ち着いている時の父は本当に優しかったけれど、気に入らないことがあるとすぐ手を上げる。母はよく辛抱しているな、私だったらすぐにでも離れるのに──といつも思っていた。

秋吉 それで自立する決意を固めたのですよね。