強打の捕手とも10年再契約したドジャースの怪

スミスはドジャースで4番の経験もある29歳の強打者だ。私が現役の時代、強豪ヤンキースにヨギ・ベラという強打者がいたから、強打の捕手がいても驚かないが、選手を育てる立場の監督経験者としては「これでいいのか」と釈然としない。

これではドジャースは、スミスが40歳になるまでの10年間は控えの捕手やライバルを育てる必要はないということになる。そして第一、次の正捕手を目指している有能な人材が「俺はこのチームではレギュラーになれないんだな」とあきらめて、他チームへの転職を目指すことになる。

『阿部巨人は本当に強いのか 日本球界への遺言』(著:広岡達朗/朝日新聞出版)

そうなればチーム強化に最も必要な、競争による若い選手の育成ができなくなるし、次の捕手の人材がいなくなるではないか。

そんなときはトレードで選手層を維持すればいい、というだろうが、どのチームもそんなことをすれば、野球がすべてカネの世界になってしまう。どこもカネの力でチームを維持強化するようになれば、プロ野球は堕落し、やがてすたれるだろう。