あたしゃ骨の髄まで根暗だよ

いつの間にか夜になっていた。輝く星や月をボケーっと眺めながらしばらく歩いた。もうとっくに人の声も賑やかな音楽も聞こえなくなっていて、虫の音と、葉っぱが風に揺れて擦れる音だけが響いていた。夏の夜の香りの中、急に自分の汗の匂いがツンとして、汗くさっ、と首をすくめたら、すごく肩が凝っていることに気づいた。

――最後、顔が死んでいなかったか心配だな。自然に笑えていたかな?

みんなの元へ戻ることはできず、気づけば自分たちが寝るロッジへ辿り着いてしまっていた。あ、やべ。急いで夫にLINEした。「限界きた。ロッジきた。子どもたち、荷物、よろしく」

送信すると、なんだかいろんなものを放棄してしまった気がして、涙が滲んできた。戻ることは諦めて、シャワーを浴びた。

なんで私はこんなにダメなんだろう。どうして上手く人と過ごせないんだろう。なんでみんなと同じように楽しくできないんだろう。いや、もういいや。もうこんなのこれで最後だ。どう思われてもいいや。あたしゃ骨の髄まで根暗だよ。

まだ21時前なのに、荷物や子どもたちを無責任に夫に任せたままなのに、ぐるぐるぐるぐる考えては沸き起こるいろいろな気持ちを何もかもまとめてガバッと布団にくるんでもう寝てしまうことにした。

しばらくするとガヤガヤと子どもたちと夫が帰ってくる音が聞こえた。「ママ大丈夫?」次男の心配そうな声がした。泣いていることを悟られないように「大丈夫だよー。ちょっと飲み過ぎちゃった。ごめんね? パパの言うことよく聞いてね、おやすみー」と努めて明るい声で言った。本当はちっとも飲み過ぎてなんかない。「ほろよい」や「檸檬堂」で酔うもんか。