翌朝の朝食で気づいたこと
翌朝、めちゃくちゃ早く目が覚めてしまった。昨晩のいろんなことは1ミリも軽くなっていなかった。でも、これで帰れるんだ。もう残り二、三時間でお別れだと思えば平気だ。もう無の境地だ、私は大仏だ。大仏の気持ちで乗り切ろう。
大仏スイッチをオンにして、朝食を食べに昨夜と同じBBQ 会場へ向かった。お菓子のゴミやお酒の瓶、蛍光に光るブレスレットなど、昨夜の楽しそうな名残がたくさん落ちていた。ああ、この光景こそ私が求めていたSNSで見かける「友達が多い人の証」だ、と思った。夏に“友達がいますよアピール”するには、まさにうってつけの絵面だった。しかし、その朝は一枚も写真を撮る気になんてならなかった。
あれ? そういえば他のみんなは……?
「みんな昨日3時まで呑んでてね。誰もまだ起きてねえのよ」
唯一起きていたリーダーが朝食を作りながら教えてくれた。
な、ん、だ、と……? てことは、今ここは我が家だけの朝食会場?
どんよりした気分が一転して晴れて、一気に「素晴らしい朝! 清々しい空気!」となった。
外で食べるご飯って、なんて美味しいんだろう。炊き立ての飯ごうのご飯に、作りたてのお味噌汁ってこんなに美味しかったっけ? なんともありきたりな感想だが、本当に美味しくて感動した。この旅行で初めて、ご飯の味がちゃんとした。
朝食を食べ終わる頃、すっぴんにボサボサ頭のご婦人たちが起きてきた。「あ、おはよー。昨日は大丈夫だった? 楽しかったね、あんま覚えてないけど」あんた誰や……。まさかの、井川遥似のあの人だった。よかった。全然なんとも思われてなかった。誰も、私のことなんて覚えちゃいなかった。
朝食の後、各自ロッジを片付け、アスレチックで子どもたちをひと遊びさせ、昼前にキャンプ場を出ることになった。アスレチックでは、ただただ子どもたちと遊んだ。もう他の人にどう思われようが、どうでもよくなっていた。
人と上手く関われなくたって、暗い人だと思われたって、もうなんでもいい。人によく思われたいからと無理して笑うなんてバカみたい。ちゃんと楽しいときだけ笑おう。
子どもたちと真剣に迷路で迷っているうちに、あっという間に時間が過ぎていた。