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noteが主催する「創作大賞2023」で幻冬舎賞を受賞した斉藤ナミさん。SNSを中心にコミカルな文体で人気を集めています。“「愛されたい」が私のすべて。自己愛まみれの奮闘記、笑い飛ばしてやってください”という斉藤さんによる、すべてをさらけ出すデビューエッセイ集『褒めてくれてもいいんですよ?』より一部ご紹介します。

総勢26名と一泊二日のキャンプへ

これまでいかにコミュニケーションが下手かを書き綴ってきたが、一方で私は、友達を作るためにかなりの鍛錬も積んできた。誘われたら断らない、いいなと思ったら声をかけてみるなど、積極的に人と会ってコミュニケーションをとろうと修行を重ねた時期もある。以前に比べたら、格段に明るく気さくに振る舞えるようになっているはずだ。

すると、そんな私の鍛錬の成果を披露するのにちょうどいい機会がやってきた。夫の友人6家族、総勢26名と一泊二日のキャンプに出かけることになったのだ。これは私にとっての期末テストと呼んでもいいかもしれない。

夫と友人たちは、昔々あるところのオシャレなダイニングバーのバイトメンバーとその客たち、という属性で構成されており、もれなくミラクル☆陽気国の住民である。あわよくば誰かと友達になりたい気持ちもなくはないが、今回はとにかく人数が多すぎるのと、「キャンプ」という、これまた陽気で社交的で生命力の強い人たちだけがこぞって楽しむイベント(私のド偏見)が舞台なので、無事に生きて帰るのが精一杯かもしれないというのが本音だった。

断っておくが、全員本当にいい人だ。社交性の欠けている私にも分け隔てなく優しく接してくれるし、ちゃんと楽しんでいるか定期的に気遣ってくれる。ただ、ひたすらにポジティブで陽気で、私とは違う星の人間なのだ。

最初に話が上がったのは2カ月前。さすがに怖気付いて、どうにか逃げられないものかと画策してきたが、うかうかしているうちに気づけば戦いはもう次の週末。すでにロッジも予約済みだ。夏だし、家族の誰も風邪を引きそうにない。残すは台風を呼び込むしかないと必死に祈祷していたら、少々早めに呼んでしまい二日前に通り過ぎてしまった。ああ、もう逃げられない。腹を括って挑むしかない。