みんなの輪の中に入ることに

ひたすら本を読んでいるフリを続けていると、いよいよ肉に、チーズ、カレーも出来上がり、子どもたちがワラワラやってきた。これが終われば本日は終了だ。明日の朝になればもう帰るだけ。つまり、ここからが正念場だ。強い気持ちでこなすぞ。

肉も、チーズも、カレーも味なんてしない。そもそもちっともお腹が空いていない。

「獺祭だー!」と楽しそうにお酒を呑み、肉を食べ、瑛人の「香水」をアカペラで大声で歌っているレインボーのダサいシャツを着た夫とその仲間たちをぼんやり眺めながら、あと少し、あと少し、と唱えていたら「あのー。こっち来ます?」と、井川遥似のご婦人から声をかけられた。

き・た……! ご婦人方の輪の中に招待される。とうとうやってきた。ラスボス、これが一番の頑張りどころだ。家で事前に予想して練習してきたステージ。大丈夫。十分にイメトレしてきたはずだ。

「いいですかあ~? すいませえ~ん」

狭いので右手をあげておどけながら体をひねってみなさんの間に割って入る。狭さと緊張とで、きっと世界で一番滑稽なポーズだったことだろう。こんなポーズをすることになるとは予想できていなかった。