トランプタワーの低層階

わたしが訪問したとき、トランプタワーの入口前には警備員が立ち、柵が設けられていたが、大統領時代ほど物々しいものではなかった。トランプに抗議するひとは、道路の反対側で静かに「トランプの二期は刑務所」「トランプは哀れな敗北者」などと看板を掲げていた。

トランプタワーの低層階は、アトリウムとして公開されており、だれでも立ち入ることができる。ブレッチア・ペルニーチェという赤みがかった大理石が全面に使われた豪華な吹き抜けを見上げると、5階分の滝が優雅に壁をつたって流れていた。

『ルポ 国威発揚-「再プロパガンダ化」する世界を歩く』(著:辻田真佐憲/中央公論新社)

エレベーターホールも、エスカレーターも金メッキ。成金趣味であまり上品な印象を受けなかったが、トランプの金ピカなイメージには完全にマッチしていた。

そんなアトリウムには、トランプブランドのさまざまな店が入店していた。トランプ・カフェ、トランプ・グリル、トランプ・バー、トランプ・スイーツ。広々としたつくりの店々のなかで、ロジャー・セワニ氏の土産物店はわずかなスペースを占めるにすぎず、一目でそこが“外様”にすぎないことがわかった。