シェアしたくなる「ネタ」的政治家

じつはトランプ自身はアルコールを一滴も飲まない。にもかかわらず、客たちはかれの写真をみながらワイングラスを傾けている。いかにも虚実の入り混じったトランプワールドらしい体験だった。飲食店のメニューには「MAGAバーガー」や、長女の名前を取った「イヴァンカ・サラダ」があったが、これらとて本人が食べたかどうかわからない。

トランプという人物は、いわば壮大な「ネタ」である。かれは長らくメディアを駆使しながら、金ピカでキッチュな独特のキャラクターを作り上げてきた。

経営するカジノを倒産させながらも成功者を気取り、女性問題でゴシップ誌を騒がせては放言を繰り返す。そのため、どんな爆弾発言をしたところで「だってあのトランプだから」と流されてしまう。

たとえ刑事裁判で負けたとしても、その人気が揺らぐことはほとんどない。これこそトランプ最大の強みだ。バイデン大統領やハリス副大統領(いずれも取材時)のような、リベラルな政治家ではそうはいかない。