今さら自由を手放したくない
リズ そう言われるのも心外だけど、ママが80代になってからはそれこそ心配なことだらけ。連絡がつかないと、何かあったかもしれないって不安になる。
冨士 そのときはそのときよ。
リズ もう10年以上前になるけれど、携帯も家の電話もつながらなかったことがあった。慌てて家に駆けつけて、隣の家の人に手伝ってもらいながら、ドアのチェーンをなんとか外して。そうしたらママは何をしていたか覚えてる? トイレでのんびりくつろいでいたの。
冨士 便座が温かくてすごく気持ちいいのよ。電気代もさほどかからないし。
リズ はあ……。心配だからと言って、一緒に暮らすのは絶対にムリ。3階建てにモノが山ほどあふれているあの家に戻ったら、喘息の発作が止まらなくなっちゃう。
冨士 私も無理ね。同居したら、毎日叱られなきゃならないもの(笑)。あなたのご飯も作らないといけないでしょう。
リズ 食事の支度くらい自分でできますよ。とにかく、私たちは性格も趣味もライフスタイルもまったく違うから、同居しないのがお互いのためだと思う。
冨士 私は6人きょうだいの中で揉まれて育って、独身時代はずっと家族と同居。結婚して夫と、離婚後もあなたと暮らしてきた。念願のひとり暮らしがようやくかなったのは、あなたが独立してから。今さら、この自由を手放したくないわ。
リズ それは同感。数年前にママが骨折して私の家に泊まってもらったときも、キツかった。「退屈」と言うから映画を見せたら「つまんない」って途中で寝るし、明け方までかりんとうをかじりながらテレビでスポーツ中継を見ているし。そんな生活、私には耐えられない。
冨士 お互いに、今くらいの距離感がちょうどいいのよね。