長年にわたり、元日に必ず遺言を認したためてきたという作家の落合恵子さん。その理由は──(構成=篠藤ゆり 撮影=本社写真部)
一番更新したいのは、自分の気持ち
1月1日に遺言を書くようになり、20年以上たちます。1年が終わり、明けた1月1日は、なんとなく気持ちが改まります。今年もどこまで元気でいられるかわからないけれど、淡々と、飄然と、でもタフに生きていこう。毎年、そんなふうに思いを新たにします。
2日になるとお年始のお客様が来ますが、1日は町も家の中も静か。どんなに忙しくても1月1日は仕事をしないと決めているので、一年で最もゆったりしています。
元日は朝から、好きな音楽をずっとかけ、大好きな本の一節を読んだりしてゆっくり過ごします。
かける音楽は、“わが青春の歌”とも言えるキャロル・キングの「You've Got a Friend(君の友だち)」や、ジョニ・ミッチェル、ボブ・ディラン、リタ・クーリッジの曲など。スタンダードジャズも好きなので、「Baby, It's Cold Outside(外は寒いよ)」もお正月の定番です。
あぁ、これはあの時の忘年会でかけた曲だ。あの時のあのひとも鬼籍に入ってしまった……などと、音楽とさまざまな記憶を重ねあわせて、ちょっとしんみりしたり、せつなくなったり。そして一段落したら、遺言を書きます。だいたい、夜遅くになっていますが、いわば私にとって、書き初めみたいなものです。