『源氏物語』は次の千年紀も生き続けていく
本名すらわかっていない“紫式部”という下級貴族の女性が書いた『源氏物語』は、鎌倉時代までに多くの派生小説を産むことになります。
室町時代には注釈書が作られ、江戸時代には大名家の姫の花嫁道具になり、一方で版本が広く読まれて、最初の近代的注釈書と言える本居宣長の『源氏物語玉の小櫛』も生まれました。
近代になると与謝野晶子や円地文子の全訳本や、田辺聖子の宝塚歌劇にもなった『新源氏物語』などを通じて、世に広がっていきました。今や『源氏物語』は多くの外国語にも翻訳され、海外にも読み継がれる「世界の古典」になっています。
そして本年、紫式部が主役の大河ドラマ『光る君へ』が作られ、平安時代の女性たちと現代の女性たちが新たな出会いをすることができたことを私は驚いています。
『源氏物語』は間違いなく次の千年紀も生き続けていくことでしょう。
『女たちの平安後期―紫式部から源平までの200年』(著:榎村寛之/中公新書)
平安後期、天皇を超える絶対権力者として上皇が院制をしいた。また、院を支える中級貴族、源氏や平家などの軍事貴族、乳母たちも権力を持ちはじめ、権力の乱立が起こった。そして、院に権力を分けられた巨大な存在の女院が誕生する。彼女たちの莫大な財産は源平合戦の混乱のきっかけを作り、ついに武士の世へと時代が移って行く。紫式部が『源氏物語』の中で予言し、中宮彰子が行き着いた女院権力とは? 「女人入眼の日本国(政治の決定権は女にある)」とまで言わしめた、優雅でたくましい女性たちの謎が、いま明かされる。