私たちの休日はたとえばこんなふうだった。朝起きると、コーヒーを1杯飲んで、すぐ出かける。地元のメインストリートを、彼の腰のリハビリも兼ねてひたらすら歩く。そしてお昼になると、知り合いの食事処に行き、1人前のお刺身定食と生ビールを頼む。

彼は小食なわりに、お酒をよく飲んだ。ビール2杯、冷酒2合とか、平気でお昼からあけてしまう。ほろ酔いのまま散歩を続け、今度は喫茶店へ行き、ハンバーグステーキ1人前をおつまみに、ワインを何杯も飲む。

私も若かったものだから、一緒になって飲んでいたけれど、まるでアルコール依存症のようだった。

酒代のほかにも出費がかさんだ。彼はお金がないのに、たばこを吸う。しかも美意識が高いから、やれ帽子だ、やれスーツだ、シャツに、靴、靴下……。もう、上から下まで好みの服をねだるのだから、救いようがない。とにかくお金が飛んでいった。

私の堪忍袋の緒が切れて、喧嘩を繰り返す日々。すると彼は「人に貸した金があるから、取ってくる」と夜中から出かけ、毎回1、2万円を持って帰ってきたりする。たぶん親戚に泣きついていたのだろう。でもそれだけではどうにもならず、私の貯金を取り崩す生活にも限界がみえ、末恐ろしくなった。

少しでも安心材料がほしい。そう思った私は、自分の鞄に小さなビニール袋を入れ、小銭ができるたびそこに貯めることにした。たかだか10円玉や100円玉貯金ではあったが、その重さにホッとしたのだ。

ある程度貯まると、こっそりと銀行に入金に行く。自分のお金なのに自分のものではないような気持ちだった。