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(イラスト:オオイシチエ)
内閣府男女共同参画局が発表した令和4年版 男女共同参画白書によると、「配偶者、恋人はいない(未婚)」との回答は、男女ともに、全世代で2割以上。20代の女性の約5割、男性の約7割が、「配偶者、恋人はいない(未婚)」との回答でした。さまざまな幸せの形があるなかで、野原玲美さん(仮名・沖縄県・主婦・73歳)は、同棲していた元美容師の彼の生活費を全て払った上に、お酒にたばこ、洋服もねだられて――
酒、たばこ、洋服代……元美容師の彼に貢いで
これは、ある男と同棲していたときの話である。彼は8歳年下で、187センチの長身、やせ形のイケメンであった。2人で歩いていると、道行く人が振り返り彼に視線を向ける。隣を歩く私には目もくれず、一方的に話しかけてくる女性もいた。
スラリとした体に似合う、黒のスーツに白いシャツ。若き頃の津川雅彦を彷彿とさせる色気があったのだ。
そんなモテモテの彼だが、お金はなかった。美容師として働いていたものの、腰を悪くして以来、店を畳んでしまった。私とつきあい出した当初は職探しをしていたが、人はなまけ者になるのが早い。無職の状態に慣れ、仕事に復帰する意欲はすっかり失われているようであった。
それでも彼のことが好きで始めた同棲生活。彼は私の髪のカット、ブローにスタイリングまで、全部やってくれた。そんなことをしてくれた男性は今までいない。自分の髪を一生懸命に仕上げてくれる姿を見るのは気分がいいものである。
とはいえ楽しい日々にも苦労は絶えず、もっぱらお金のことで悩んでいた。当時、私の月給は20万円ほど。そこからアパートの家賃4万5000円に、水道光熱費などの固定費、そして2人分の生活費をまかなう。