舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の新連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第二回は「脱力、ダメ出し、マグマヨガ」です。(構成=大内弓子 撮影=小林ばく)
必死でやって得られる真理
ミュージカル『モーツァルト!』の公演が続いています。この作品の上演は今回で8度目。2002年の初演から出ているのは、モーツァルトの父レオポルトを演じている僕と、コロレド大司教役の山口祐一郎だけになりました。
僕たちはこの役については22年間のキャリアがあるわけです。それに対して、モーツァルト役のキャストのひとり古川雄大くんは3度目6年のキャリアで、もうひとりの京本大我くんにいたっては今回が初挑戦。
とにかく必死でやっていて、その必死にもがいている姿が実にモーツァルトっぽくていいなと思いながら見ています。
実は、そうして目いっぱい必死でやることでしか得られない真理もあるんです。それは僕も、24年3~4月に上演したミュージカル『スウィーニー・トッド』の舞台に立つことで、改めて気づかされたのでした。
『スウィーニー・トッド』はスティーヴン・ソンドハイムの楽曲が実に難しく、07年の初出演時にはヒイヒイ言いながら歌って、舞台の終盤にはもう汗まみれになっていたんです。
それが5度目となる今回は、最後まで一滴も汗をかいてない! びっくり! 前回まではそれだけ体中に力が入っていた、ってことなんだよね。