いろいろな人生を演じても、実体験は役柄を超える
この歳で長く患って、ようやく見えてきたこともあります。
私には強いところがあって、いろいろなところでご無礼をしてきました。そして病気になって、なるほどなあ、と気づいたことが山ほどあります。突っ走るだけが能じゃない、こんなに広い世界があるんですね。「病気になったことで優しくなれた」とおっしゃる方がいるけど、その通り。ようやく自分のことが見えてきて、もうホントに、穴があったら入りたいわ。(笑)
これまで芝居の役柄を通して、いろいろな人生を生きてきたけれど、実体験は役柄を超える。もちろん一所懸命考えて役作りをしてきましたよ。でもね、立てない、起き上がれない、すべてを他人に依存しないと生きていかれない、それがどういうことであるのかは、体験してみてこそのことでした。
今の目標は、お客様の前に姿を見せられるようになること。一人で車椅子に乗って舞台の袖まで行き、お医者様にちょっと支えられながら立ち上がり、お客様の前に進んで、ニッコリ笑顔で「ご心配をおかけしました」。これが言えたらイエーイ! もう、それだけで十分だわ。