鍵のひとつは「認知症」
私は、20代で父親を、40代で母親を見送りました。父は遺言書を遺していませんでした。
なぜなら、自身が思うよりもずっと若い50代初めにがんと宣告されて、会社、家族、自身のことを思うと、ほかにするべきことが多すぎて、残された歳月で遺言書を書こうという時間も考えもなかったのだろうと思います。
その頃、私たち3人きょうだいはみんなが20代でした。一番下の弟は大学院に行く予定でした。真ん中の弟は父の会社に入るか迷っていました。
私は看護学生でこのまま続けるかどうかとても悩みました。
父を亡くし3人共にどうしたらいいのか見つからない答えを求めながらも心細くしている母を父の代わりに守れるようにとそれぞれの決断をしました。
母はこの後まもなくふさぎ込むことが増え、お稽古や外出に行かなくなりました。様子がおかしいと思いながらもきょうだい3人がそれぞれに自立し始めていた時期とも重なり、気づいた頃には病気はどんどんと進んでいきました。