高齢になると認知機能が低下してくることも(写真提供:Photo AC)
遺言書の「有効・無効」はどうやって判断されるのか?相続トラブルはいかにして起こるのか?医学的な見解をもとに遺言書を精査する事業を行う遺言書のプロ・圓井順子さんが、〈家族が揉めない〉〈無効にならない〉遺言書作成のポイントをわかりやすく解説します。『遺言適齢期 予防医療と予防相続で争続は防げる』(幻冬舎)より一部を抜粋して紹介します。

遺言書がどんどんバージョンダウン!?

ホントにあった嘘みたいな話
80代で亡くなった母親の遺言書が3つ発見され、次女と長女が法廷で争う羽目に


被相続人である母親は、亡くなる15年以上前に、ずっと世話になってきた次女に対して、感謝の気持ちとともに、「預貯金や不動産などすべての資産を次女に相続させる」という本来の自分の意思を「遺言書」に遺し、次女にも伝えていた。

しかし!母親の死後に出てきた遺言書は、それとは違う内容のものだった。しかも2通も発見。

その1つが亡くなる4年前のもの。「不動産は長女に、預貯金は次女に」であった。

さらにその2年後には「預貯金不動産すべての資産を長女に相続させる」という遺言書だった。「書き換えられるたびに、バージョンダウンしていった感じ。

母の意思とは反する内容になっていったんです」(次女)母親は晩年、認知機能の低下だけでなく、亡くなる4~5年前から病も患い、在宅で投薬治療を受けていた。

ほぼ寝たきりの状態。そんな母親の介護と看護を最後に行っていた長女は、亡くなるまでの数年、母親の住まいに同居している。