親の判断力が低下したときは子が代理人になるのが自然?

実際、成年後見制度が始まった当初は、配偶者や子などの親族が法定後見人になるケースが7〜8割を占めていました。

でも、今は違います。裁判所は弁護士や司法書士など親族以外の専門家を後見人として選任するケースが多くなり、親族の割合は20%を下回っています。

その理由は、法定後見人となった親族の「使い込み」があまりに多いことです。財産はあくまでも本人のものであり、成年後見制度は本人の権利を守ることが目的。

所有権が移転したわけではないのです。後見人になったからといって、その財産を自由に使ってよいわけではありません。

親の介護や入院の費用にするのが目的の場合、自分のために勝手に使うことはないだろうと思います。

でも、たとえば以前から夫の預金を自由に使っていた妻が後見人になったら、どうでしょう。長年の習慣から、夫が認知症になってからも自分のために使い続けるかもしれません。

子が後見人になった場合も、自分や自分の家族のために使うことは十分にあり得ます。子どもの教育費がかさんで家計が苦しくなれば、「認知症になっていなければ、きっと孫のためにお金を出してくれたはずだ」などと考えて、親の預金を使うのではないでしょうか。

「とりあえずちょっと貸してもらって、後で返せばいい」と考えることもあると思います。世間の常識的な感覚からすれば、「それぐらいいいだろう」と許せる範囲かもしれません。

しかし後見人は本人の財産を守るのが役目ですから、法的にみれば、これはいずれも「使い込み」で、犯罪になります。

親の財産を勝手に使いトラブルに…(写真:stock.adobe.com)