英語について、謝らない

しかし、英語力について率直に話すことは、謝ることではない。英語に慣れていない日本人が、こう言っているのをたびたび聞く。

I am sorry that my English is very poor.

ELF発想では、英語の上手下手は、謝ることではない。個々の英語を使ってきた歴史や経験の差だし、その人のキャリアや人生における英語の優先度の違いの表れだ。だから、淡々と礼儀をもって「もう少しゆっくり話してください」とお願いする。必要なら「まだ英語の会議に充分慣れていないので」と理由を添えてもいい。

・Could you please speak a little slower and write the numbers on the whiteboard? I am having trouble understanding.

・I was wondering if everyone could speak slower. I am not used to attending meetings in English.

そして、謝る代わりに、“Thank you.”あるいは、“Thanks for your understanding. ”と、お礼を言おう。会議の最後に、相手の目を見ながら握手をし笑顔で感謝を伝えるほうが、対等で長期的に良好なビジネス関係が作れる。

なお、英語力を上下と捉えず、多様性と考えるのだから、自分より英語に不慣れな人と対話する際には、相手の状況に配慮してわかりやすい英語を使おう。

(D)会議後のフォロー

話をもとに戻そう。ミーティングに参加する際に、聴き取りに課題があると感じるときの4つの対策の最後を説明する。

ミーティングが終わったら、すぐに英語での議論を整理して議事録を作成し、自分たちが理解している内容を他の参加者と共有し、確認しておく。

日本語でもミーティング後の議事録は重要だが、英語では、聞き違いや解釈の違いのリスクが高いから、よりいっそう、理解の確認に注意が必要になる。

英語で議事録を作るのは、日本語よりはるかに手間がかかる。しかし、直後の議事録で双方の誤解を見つければ修復できる可能性は高く、時間が経ってから問題が発見されて解決が困難になるのを防げる。

※本稿は、『使うための英語―ELF(世界の共通語)として学ぶ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


使うための英語―ELF(世界の共通語)として学ぶ』(著:瀧野みゆき/中央公論新社)

自分の考えを英語で伝えたい、「使うため」の英語を学びたい!

そんな人々に本書は、ELF=「世界の共通語(リンガ・フランカ)としての英語」への発想転換を提案する。

発音やリスニングからテクノロジーの活用まで、「知っている英語」を「使える英語」に変えるための具体的な英語勉強法を紹介する。