外回りの見学

千里は外回りの見学から始めた。最初は胃切除だった。指導の看護師が外回りをしながら、要点を教えてくれる。

二人で術野を覗き込みながら、先輩が囁(ささや)いてくれる。

(写真提供:Photo AC)

「今、大網(たいもう)を処理しているところ」

「胃を切り離したわね」

「胃と小腸の吻合が始まったね。これがビルロート2法というやり方」

千里は座学も十分にしていたが、実際の手術を目にするのは、教科書を読むのとは全然違う世界だということを改めて知った。目に焼き付けること、耳から情報を入れること、そのことが千里の真の勉強になった。

無影灯の操作もやってみた。ガーゼの重さも測ってみた。手術記録用紙に記載もしてみた。

胃部分切除を基本として、これより簡単な手術、これより難しい手術の外回りをこなし、先輩のOKが出たところで独り立ちした。外科だけでなく、他科の外回りもどんどん任された。