最終回、倫子が涙を流さなかった理由とは
また、道長が亡くなるとき、左手を布団の外に出していたのは、脚本にはない演出だったとか。「倫子には申し訳ないけど、あの手はまひろを探していて、そこで息絶えたのかなあ、と。で、最後は私が納めますと、その手を倫子が布団に納めた」という中島さんの説明に、吉高さんは思わず、「怖いよね~」。倫子は、あの左手がまひろを探していたことに、気づいていたのだそうです。
さらに興味深いのは、「倫子は涙を流さない」と脚本に明記されていたこと。その意図について、大石さんはこう語りました。
「倫子はあそこで、ある意味、すっきりしたというか、『自分の人生の第1章は終わり』だと考えたんです。だから涙は流さなかった。その後、倫子は80代まで生きますからね。(道長の死で)ひとつの時代の終わりを認識したという醒めた気持ちだったと思います」
そして、いよいよラストの場面。「嵐が来るわ……」というセリフのあとのまひろの表情が、「少しほほえんでいたように見えた」という岩槻アナに、中島さんが、「セリフを言うときは笑っていないんだけど、嵐が来るという暗い顔で終わりたくないというのもあって、歩き出すときに、ちょっとニュアンスが入っていた部分はあります」と解説。変化していく時代を「見届けるぞ」といった気持ちを含んだ表情だったことが明かされました。
翌日が柄本さんの38歳の誕生日ということで、最後は「ハッピーバースデー」の合唱でフィナーレに。約3時間の充実のイベントが終了しました。
トークショーでも何度も話に出たように、その日は美しい満月の夜。たくさんの人が空を見上げて、『光る君へ』の世界との名残を惜しむように、月の写真を撮っていたのが印象的でした。