本当はものすごいスターダンサーを育てたかったのです。でもそれはとんでもなく難しいと悟りました。そこで、あるときから、スターダンサーを生むことができなくても、《Kバレエ》という組織をスターにすることならできるのではないか、と考えをシフトするようになりました。
Kバレエには高水準のダンサーがたくさんいます。もちろん実力に微差はあるけれども、それぞれが魅力あるダンサーたちです。必要なのは、それぞれの魅力を引き出せる力のある作品。だったらそれを僕がどんどん作っていこう、と。
Kバレエは、これから30年、50年……と続いていく組織でありたいし、そうでなくてはいけない。そう考えて、最近はさまざまな取り組みを始めました。
生徒の教育に関しては、英国ロイヤル・バレエ学校で長い間専任教師を務めてきた蔵健太に、絶対的信頼をおいてやってもらっています。トップダンサーたちに、僕に代わって演出や振付を任せることも増えてきました。そして僕がなすべきは、繰り返しますが、とにかくいいバレエ作品を生み出すこと。
オリジナル作品であれ、『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』など古典の名作の再演出であれ、僕は自分が面白いと思う感覚を大切にして作っています。それは決してクラシックバレエの枠を超えようとするものではなく、100年前の人が見ても、100年後の人が見ても、「これはクラシックバレエだ」と思ってもらえるものでなければならないと考えています。