FACTFULNESS
10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

著◎ハンス・ロスリングほか
訳◎上杉周作、関美和
日経BP社 1800円

あなたの「思い込み度」は?

質問です。

「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?」

A20% B40% C60% 

正解率は7%、正しい答えはCです。間違えた人は、本書を読む価値があります。もう一問。

「世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?」

A20% B50% C80%

この答えは本書で確認してください。少なくともAの20%を選んだ方は必読です。

スウェーデンで国境なき医師団をつくった医師であり、教育者としても著名な著者によると、ジャーナリストや科学者など知識が多い人でさえ、不正解が多いという。なぜなのか。その分析が本書の肝である。ハッピーなことはニュースになりにくいが、格差拡大、事件・事故など悪いことがニュースになるのは、みなさんもよく知るところ。著者によると、「世界はどんどん悪くなっている」と見る人間のネガティブ本能、「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という焦り本能など10の思い込みが、事実を見る目を曇らせるという。

憂国の士、世界の苦悩をわがことのように考え、想像力の大切さを訴える知識人は多い。しかし、こうした賢い人ほど自分を批判的に見ず、世界の真実を知らないという。間違った知識から正当な解決策は生まれない。本書の意義は大きい。

データ版・純粋理性批判とでもいうべき本は、「ビル・ゲイツ大絶賛」の帯も注目され、19年1月に発売されてから30万部を突破している。