船の上で働くなんて思ってもいなかった

24歳で助産師になったときは、まさか自分が海外、しかも船の上で働く日がくるなんて思ってもいませんでした。ただ、東京の病院の産婦人科で働くうちに、ここは自分がいる場所ではないと感じるようになってしまって……。

年功序列による理不尽な上下関係に心がぐったりし、患者さんに接する時間より、「念のため」と膨大な書類を書かされる毎日にもうんざりで。何よりも、すべてに関して保守的で内向きな空気に息が詰まりそうでした。

とはいえ、それって日本の職場ならどこでもありがちなことなので、他の病院に移っても同じだろうと。だったら、むしろ海外で働いたほうがいいんじゃないかと、就職5年目で退職することに。

捜索救助船と難民ボートが映っている写真
アフリカからの難民たちは、地中海という大海を到底渡ることができないような簡素なボートでやって来る。左が捜索救助船。©SOS Méditerranée

で、病院をやめてプー太郎になったので(笑)、もはや何も失うものはないと無謀にも国境なき医師団のスタッフに応募して、面接で受かってしまったことが私の人生を劇的に変えるきっかけになったのです。