アドレナリンがハンパじゃない

そんな私でも、初めて捜索救助船に乗ったときは驚きました。それなりの大きさがある船とはいえ、600人もの人たちが救助され、甲板も船内もギュウギュウ詰めの状態で。その中には、臨月の妊婦さんもいれば、まだヘソの緒がついている生後間もない赤ちゃんもいる。

女の子を背負い、紺色の制服で何かを行っている小島さん
助産師の仕事だけでなく、掃除、料理なども小島さんの仕事だ。300人分のご飯を調理するのに4時間はかかる。©SOS Méditerranée

でも、身の危険を冒してでも、海を渡ってよりよい暮らしがしたいと思っている人たちのエネルギーってすごいんですよ。捜索救助船に避難してからも威嚇射撃をされることはありますし、海が荒れて甲板がびしょ濡れになり、狭い室内に大勢が閉じ込められてしまうこともある。

そんな過酷な状況に置かれても、「このTシャツの色は嫌い! 他の色に変えて!」なんて訴えてくる。食事を配る列に横入りして、いち早く自分の分を確保するのはあたりまえ(笑)。震災時に、水や食料を配る列に大人しく並んで待っている日本人とは大違いです。

『船上の助産師』(著:小島毬奈/ほんの木)
『船上の助産師』(著:小島毬奈/ほんの木)
リビア沖から地中海を渡る「死のルート」上で、移民・難民救助船に乗り、ただ一人の日本人助産師として活躍する著者のリアルな手記。人道支援を止めるな!地中海からのSOS!をテーマに「船上の助産師・小島毬奈さん」の出前授業を小学校・中学校を中心に全国展開スタート。https://www.atpress.ne.jp/news/409605

「絶対に生き抜いてやる!」というエネルギーがハンパじゃない。そんなパワフルな人たちに囲まれているとアドレナリンがバンバン出まくって、めちゃくちゃ楽しい。過酷な状況であればあるほど、生きているという実感がある。それが、私がこの仕事を続けている一番の理由なんですよ。