垣谷美雨さん(撮影:大河内禎)
2005年に小説家デビュー。2021年に天海祐希さんの主演で映画化された『老後の資金がありません』をはじめ、『代理母、はじめました』『墓じまいラプソディ』など多数の著書を持つ垣谷美雨さん。新作の執筆中は「誰か面白がってくれるのだろうか」と不安になることがあると語りますが、今回の『マンダラチャート』はその不安はなかったそう。その理由は――。(構成:山田真理 撮影:大河内禎)

《昭和》に戻って悪戦苦闘

目標達成のためにするべきことを、3×3のマス目に書き出す。大谷翔平選手が高校1年生で書いた「マンダラチャート」は、彼がその通りに夢を叶えたということで話題になりました。

63歳の主婦・雅美は、近所のカフェで「もし人生をやり直せるなら」と自分なりのマンダラチャートを書き始めます。女性が胸を張って生きられる世の中にしたい、そのためには何をすればいいか。9つのマス目をすべて埋めた瞬間、雅美は中学時代にタイムスリップ。昭和どまんなかの古くさい価値観に翻弄されながら、目標に向かって悪戦苦闘します。

主人公は私とほぼ同世代なので、彼女が中学生からやり直す人生には、昭和時代の風潮が反映されています。特に女性の就職は、男女雇用機会均等法の施行前で本当に厳しかった。

大学では自分より成績の悪い男性なんていくらでもいたのに、「え、彼は楽に就職ができて、私はそもそも試験を受けさせてももらえないってどういうこと?」と心底驚いたことも。ほかにも、美人ゆえに大学の就職課から優遇される女性を書きましたが、これもよくあった話です。

また、昇給や昇進にあからさまな差をつけられることや、昭和ならではのセクハラ、パワハラに悩む女性も本当に多かった。

 

『マンダラチャート』(著:垣谷美雨/中央公論新社)